小説 : (仮)日本アマチュアファミコン連盟が世界征服をするまでの物語
- 2019/06/27
- 17:42

―― 日本アマチュアファミコン連盟物語 ――
<ワイワイ・ガヤガヤ>
公男は50歳のファミコンオタクである。
学生時代は『ファミ研』に所属し、勉強そっちのけでファミコンにのめり込んだ。
当時はどこの家庭にもファミコンがあり、学校の休み時間の話題もファミコンという時代だった。早いもので、あれから30年。
今、彼は苦悶の表情を浮かべボソボソとひとり言を言っている。来週予定されているファミコン仲間との飲み会に参加するか否か。くだらないようだが今の彼にとって、それはなかなかの問題なのだ。
『楽しみだけど、いつも同じ昔ばなしの繰り返し。さらには、ファミコンを今でもやっているのは俺だけなんだよなぁ。とはいえ、他に友だというのもいないしな。深く考えるのはやめよう。』
来週会う仲間というのは、学校を卒業する際にファミ研OB会を一緒に立ち上げた仲間達である。
発足時は10名程度と小規模だった。
ファミコン好きな仲間が集まりワイワイ・ガヤガヤと楽しむ趣味の会であった。
公男は、仲間から『ファミ・キチ』と呼ばれるくらい熱狂的なファミコンファンであった。どちらかというと人見知りでリーダーには向いていなかったが、ファミキチであり頼みごとをされると断れない性格もあっていつのまにか幹事役になっていた。
<サカノウエノホニャララ>
それから10年後、他校のOB会を吸収するなどしてメンバーの数は1000名を超えていた。
全国規模のイベントを行ったり、ゲーム記録カードの交換を仕切っていた。
ゲーム記録カードとは、各自はがきサイズのカードにゲーム名やスコアなどを記載し交換したい相手の会員番号を書いて公男に送る事になっていた。
公男は集まったカードをOBメンバーにまとめて送る役割をになっていた。
メンバーは他のメンバーに直接送るよりも負担が少なくて済むため、1度に100枚を発送するメンバーも存在した。
仲間との文通のようなものになっていて、メンバーは毎月楽しみにしていた。
カード転送は会の価値であると考えるメンバーも多かった。
さらに数年後、順調に運営されていたOB会であるがいくつかの問題が出てきた。
規模が大きくなった事でボランティア幹事である公男だけでは対応ができなくなっていた。年1万円の会費だけで合計1000万円を超え、貯蓄は5000万円を超えていた。
公男個人の銀行口座で管理していたが、それに疑問を持つものも出てきた。
イベントもピックサイト規模で行うようになり公男個人での契約が厳しくなってきていた。またカード転送のためにアルバイトも採用するようになり徐々に運営が複雑になってきた。またゲーム依存を防ぐ理不尽な法律などが制定される動きがあり、政府にも働きかけが必要になってきた。
公男は会社を辞めてOB会の運営に専念するようになった。
<ホージン>
そんな頃
司法書士である仲間の1人から、“活動の規模が大きくなったので個人では限界にきているので法人化が必要なのではないか”とアドバイスをもらった。そこで設立時のメンバーが集まりワイワイ・ガヤガヤと話をして『一般社団法人』として再スタートを切る事になった。
ファミコンという”道楽仲間を繋ぐための活動”のためだけに法人化するという事は大げさに思えたが、諸々の問題に直面していた公男にとっては理解するまでにそう時間を要さなかった。
そうして設立されたのが『日本アマチュアファミコン連盟(JAFL)』である。
設立時にゲーム内チャット機能を使い世界のファミコン連盟に宣言文が送られた。「(日本語訳)日本アマチュアファミコン連盟の結成を報告できることを我ら誇りに思う、本件を他ゲーマーにも告知せられたし」と送ったのです。
その後、会員数は順調に増加し、ピーク時は40000人に達する規模になった。
社会的にも影響力があり政治家にもパイプができるなど一目置かれる法人にまでなっていた。
<バンジージャンパー>
ある時期から新規メンバーが減少し、既存メンバーも離れていくようになってきた。背景としては、インターネットなどにより様々なゲームや趣味が人気を集めファミコンを趣味とする人は徐々に減っていった事が考えられた。
現在では、400名程度と小さな団体になった。
ファミコン好きのメンバーが集まった小さな会が大きくなり、その後ピークを迎え、その後急激な減退を続けてきた。新たにファミコンを始める人はほとんどいなくなってきた。
“色が白いは七難隠す”ではないが、右肩上がりの時代は問題が表面化しないが、減退してくると様々な問題が表面化してくるものである。怪文書が出回るようになった。決め事は何も決まらなくなった。貯金もごくわずかになっていた。
連盟に関して聞こえてくるのは耳をふさぎたくなるような話しばかりである。
そもそもは顔見知りのOB会であり、必要になって法人化をしたが、その結果、当初の志は忘れられ保身が目的で動くメンバーが増えてきた。
<・・・・・・>
公男は、法人立ち上げ時に会長に就任したが、公男にとって法人の運営は難しく荷が重すぎたため1期で退任していた。
現在公男は会員の1人として連盟を遠くから見守っている。
数年に一度行われる連盟の選挙では、候補者について調べる気力もなくなり適当に知った名前を見つけて投票している。波風をたてたくないので、もう、惰性である。
リビングでお気に入りの“テンテン堂スイッチ”を片手に公男はつぶやいた。

『あれ、何を悩んでいたんだっけ・・・・・ まっいっか・・』
スイッチで遊び終えた公男は、“ファミリーマートで買ったチキン揚げ”を頬張りながら、横に置いてあるファミコンの“RESET”と書かれたボタンを何度も何度も力いっぱい押しながら意味不明な独り言を何時間も呟き続けた。
この時点で、これからファミコン界で起きる想像を絶する大変化を知る由もなかった。
―つづく―
2020年7月7日掲載
架空の話です。実在しません。ファミリーコンピューターと関係はありません。
転載は禁止します。何も責任はとれません。
すぐに閲覧できなくなる可能性がありあす。
リレー方式なので続きは、どなたかお願いします。
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